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第2話 嬉涙

腰が痛くて目が覚めた。
時計を見ると朝の9時。

・・・えっと・・・
そうだ、今日は日曜だからコウちゃんのお弁当はなかったけど、組員の朝食の準備をした後、
どうしても眠くなって部屋に帰ってきてもう一度寝たんだった。

お腹が目立つようになってから、眠りが浅くなった。
夜中に足がつって目が覚めたりするし、
やっぱり寝返りとかを自然にうてないから、どうしても眠りづらいのだ。

隣を見る。
誰もいない。

昨日の夜も統矢さんは帰ってこなかった。
今朝もまだ帰ってきてないようだ。

大きなベッドに一人で眠るのは本当に寂しい。
ぬいぐるみでも買おうかと思うほど。

このベッドは統矢さんがこの部屋に引越した時に新しく購入した、かなり大きなものだ。
私と蓮と3人で寝れるようにと、お店で一番大きい物を買ってくれた。

でも、思わず、そんな日は来るんだろうかと訝しく思うほど統矢さんは帰ってこない。
今日は2月1日だから・・・統矢さんが愛さんと会うようになって一ヶ月くらいだ。
その一ヶ月の間にも、私のお腹はますます大きくなり、予定日まで後20日だ。


また腰が痛みだした。
陣痛かな、とも思ったけどいくらなんでも早すぎるだろう。
それにお腹は全く痛くない。


カチャカチャ

扉の鍵を開ける音がした。
―――統矢さんだ!

私は何故か寝た振りをした。

統矢さんは部屋に入って来ると、机へ向かい、ガチャガチャと何かを取り出すと、
私には目もくれず再び出て行った。

統矢さんが出て行った後も、私はベッドの中でしばらく息を殺していた。

それからパッと起き上がると窓に駆け寄る。
駐車場から統矢さんを乗せた組の車が出て行くのが見えた。



「ユウ、どうしたん?」
「あ。宏美さん。なんか腰が痛くて」
「大丈夫?マッサージしようか?」
「いえ、平気です」

平気と言いつつ平気ではない。
なんかこの腰の痛み、一定間隔で来ているような・・・
どうしよう、もしや本当に陣痛?
でもそんなこと誰かに聞いても分かるはず・・・そうだ!
新米パパの庄治なら何かわかるかも!

「え?腰が痛い?」
「うん。お腹は痛くないんだけど、腰の痛みは、なんか30分間隔位で来るの」
「痛いのって何秒くらい?」
「15秒くらいかな」
「おお!陣痛かもしんねーぞ!」
「え!?でもまだ予定日まで3週間くらいあるよ?」
「2500グラム以上あれば、いつ産まれてもおかしくないからな。一度病院に電話しろよ」

そうか、病院に聞けばいいんだ。
なんでそんなこと思いつかないんだ。
ちょっとパニくってるのかな。

庄治にお礼をいい、病院に電話すると、

「陣痛は人それぞれですからね。お腹より先に腰が痛くなる人もいます。
痛みが10分以下の間隔で来て、30秒以上続くようだと入院準備をして病院に来てください」

との事。

それから2時間くらい、私は腕時計片手にあっちをウロウロ、こっちをウロウロ・・・
その挙動不審ぶりから、組員に「どうした?どうした?」と問い詰められるが、まだ陣痛とも言い切れない。

ちなみに組員達は、もちろん統矢さんの浮気に気づいているけど、私に慰めの言葉をかけたり、
私に対する態度が変わったりすることはない。
やはり、ヤクザの世界で外に女をつくることなど取るに足らない事なのかもしれない。

「どうだ?」
「うん・・・今、8分間隔で1分くらい痛みが続く・・・てゆーか・・・かなり腰痛い」

もはや痛みが来ているときは歩くこともできず、思わず壁にもたれかかってしまう。

「よし、病院いこーぜ。荷物取ってくるからユウは車んとこ行っとけ」
「ありがとう、庄治」

庄治がいてくれてよかった。
さすが経験者、頼りになる。



「ちょっと待って!ネェちゃん、病院行くの!?俺も行く!!」

庄治が車を出そうとすると、コウちゃんが私の横に飛び乗ってきた。

病院までは車で15分ほどだけど、
破水したらどうしよう、とか
急に痛みが酷くなったらどうしよう、とか
気が気じゃなかった。

でもなんとか無事に病院に到着すると、すぐに内診された。
この頃になると痛みが腰だけでなく、お腹にも広がっていた。
痛みが来ている時に内診したい、と言われ診られたが、
その痛いこと、痛いこと・・・思わず悲鳴が出た。

「たぶん陣痛ですね。病院着に着替えて陣痛室で経過を見ましょう」

という訳で、陣痛室なるところへ案内された。
陣痛室はご家族の方だけ、と言われたので庄治は廊下で待っていたが、
コウちゃんは「弟です!!」と言い張り、部屋の中に入ってきた。

この時点で庄治が統矢さんの携帯に連絡したが繋がらなかった。

陣痛室は・・・まさに修羅場だった。
痛みが3分間隔くらいになる頃には、私は既に虫の息。
悲鳴も出ない。
痛い、というより、すごい勢いで出てこようとする赤ちゃんを食い止めるのがとてつもなく辛い。
もはや自分の力では抑えきれず、勝手に赤ちゃんが出てくるのではないかという感じ。
でも、お医者さんの許可でるまでイキんではいけない。

陣痛が来るたびに唇をかみ締めベッドの柵をギュッと握る。
・・・ダメ!もう限界!!!赤ちゃんが出てきそう!!!!
・・・統矢さん!!!

その時、コウちゃんが私の手を強く握った。

「ネェちゃん、大丈夫だよ!統矢さんの代わりにはなれないけど、俺、ちゃんとついてるから!」

返事はできなかった。
その代わり涙が出てきた。
陣痛の痛みは、涙が出てくるような種類の痛みじゃない。
この涙は、嬉涙だ。

ありがとう・・・コウちゃん



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Category : [18years]本編 | Theme : 自作連載小説 | Genre : 小説・文学 |

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