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第23話 お買い物(前編)

「ユウ。デパート行くぞ」

おお、ユウ、19歳にして難聴か。

「おい、聞こえてるか?」
「聞こえてますけど意味がわかりません」
「デパートって知ってるか?」
「服とか靴とか食べ物とか売ってるとこで、スーパーじゃないとこ」
「おう、わかってるじゃないか。いくぞ」

ええー!?


統矢さんと組の車の後部座席に座る・・・ってところが相変わらずで色気がないが、
ついこないだ一緒に検診に行ったところなのに、こうも続けて一緒にお出かけとは!
しかも、デパート!!

「・・・何をヘラヘラしてるんだ?」
「ヘラヘラさせといてください」
「・・・」

到着したのは、高越屋の駐車場。
お付きの大輔やら護衛の人やらが一緒なのも相変わらずで、ゾロゾロとデパートの中へ。
そういえば、何を買うんだろう?
統矢さんの服か何かかな?
エレベーターを待っている間、館内案内の看板を見上げる。
紳士物は6階だ。

しかし、エレベーターに乗り込み、大輔が押したボタンは9階。
どうやら、装飾品の階らしいが、何を買うのか?

「うわー」

エレベーターを降りると思わず声をあげてしまった。
こんな階、初めて来た!
他の階とは違うオレンジ色の光の中、時計や宝石類がキラキラと輝く。
床には分厚い絨毯。
ベビーカーは押しにくそうだな、なんてママンなことが頭をよぎる。

でも統矢さんはそんな商品には目もくれず、スタスタと一番奥の方へ進んでいった。
その先には「お客様サロン」なるものが。
なんだそれ。

「廣野様。お待ちしておりました」

お客様サロンの入り口で待っていたのは、いかにもって感じの美人な店員さん。
全身から品の良さがでている。対するは19歳、難聴のユウだ。勝負にならない。

「電話で聞いてると思うけど、今日はコイツの服を貰いにきた」
「はい、承知しております」

そういうと美人店員は私の方に向き直り深々とお辞儀した。

「こちらで廣野様の担当をさせて頂いてております、小倉と申します。よろしくお願いいたします」
「あ、はい。えっと、ユウと言います。こちらこそよろしくお願いします」

果たして「ユウと言います」なんて自己紹介でよかったのか?
岩城結子です、と言えばよかったか?
いや、今更それはないよな、ならば廣野結子か?それとも廣野ユウか?
でもまだ結婚してないし。

一人で自問自答し、「廣野の妻です」と言えばいいのだという答えに至るのに
たっぷり5分はかかった。
もちろん、その5分の間、周りがポケーっと待っていてくれるはずもなく、
話はずんずん進んでいた。
どうやら、私のクリスマスパーティ用のドレスを買いに来たようだ(他人事)。

「クリスマスパーティって、例の胡散臭い政治家パーティのことですか?」
「そうそう、それそれ」
「・・・私、行くんですか?」
「嫌か?経験値アップには、いいパーティだぞ」

どんなRPGだ。

でも確かに興味はある、というか、どれだけ胡散臭いのか見てみたい。
という訳で早速ドレス選び・・・ではないようだ。
なにやら別室に連れて行かれ、「スリーサイズと身長、足のサイズを測らせていただきます」
と、メジャーでグルグル巻きにされた。
妊婦にスリーサイズもクソもない。

そして、統矢さんのところに戻ると、すかさずデザイナーと名乗る人物が現れた。
・・・これはオーダーメイドって奴ですか??
小倉さんが話しを進める。

「奥様はお若いですから、あまり地味なものもいかがと。クリスマスパーティですしね。
とはいえ、目立ちすぎないようなドレスとなりますと・・・」

さすが、廣野家担当の小倉さん。パーティの詳細まで心得ているとみえる。
そしてデザイナーさんも次々とデザインと色の案を出してくる。
もちろん、クリスマスの頃に私のお腹の大きさも考慮して。

チラッと統矢さんの方をみると・・・おお、魂がどこかに旅立っておられるぞ。

よく結婚式の打ち合わせで、新郎新婦が喧嘩するというが、分かる気がする。
女は元来、服やら花やらが好きだからそういう打ち合わせも楽しめるだろう。話も長くなるはずだ。
でも男の方は、訳がわからず面倒くさくなって早く終わらせようとする・・・
で、喧嘩してしまう。
いっそ、統矢さんのように心頭滅却してられる方が楽だろう。

「廣野様はどのようなお召し物にされるのですか?奥様のドレスもそちらに合うものにいたしませんと」

急に小倉さんから統矢さんに話題がふられた。
あ。魂が戻ってきた。

「俺は・・・どうしようかな。いくつも似たようなスーツ持ってるし適当に着るよ」
「お言葉ですが、あのパーティですと過去の物の着回しは避けるべきだと思います。
皆様、見てらっしゃらないようでしっかり見てらっしゃいますので」
「・・・そうか。じゃあ俺も買うよ。でも既製品でいいぞ」
「かしこまりました、サンプルをお持ちします」

ものの15分ほどで、室内にずらっと20着ほどのスーツが並んだ。

「これ」
「選ぶのはや!」
「俺なんてなんでもいいんだよ」

そういいつつちゃっかり、おそらくそのパーティにピッタリなのであろうスーツをセレクトしている。
一瞬黒かとも思える深い紫のスーツだ。
でも黒のスーツと並べるとその違いは歴然。着る人を選ぶスーツだけど統矢さんなら似合いそうだ。
小倉さんも満足そうに微笑んだ。

「結構だと思います。では奥様の方はワインレッドにいたしましょう」

結局その言葉が採用され、色は明るめのワインレッドで、よく見ると細かいディテールが施されている、
色っぽいというよりはかわいい感じのドレスになった。
素材はかなりいい物を使うようで、遠目には目立たず、それでいて質の良さが分かるドレスとなる、らしい。
私が、もうじゅうぶん!と言ったので、靴と鞄は既製品の物を買うことになった。

「アクセサリーはどうなさいますか?」
「どうする?」
「・・・家に何かありますか?」
「ああ。お袋のとか、他にも色々あると思うぞ」
「じゃあ、それで!」

こういうところのアクセサリーって私が想像してるようなモノとは
値段が2桁3桁くらい違う気がして、とても見せてもらおうとは思えない。
いや、そんなアクセサリーでも統矢さんはポンと買ってくれるのだろう。
それが怖いのだ。分不相応過ぎ。

それにしても、小倉さん。すごい人だ。もちろん商売だからなのだろうけど、
廣野家のことを本当に良く知っていて、私たちの為になるようにアドバイスしてくれる。
高越屋の利益にならないことでもどんどん提案してくれる。
こんなところにも、廣野組のために働いてくれる人がいるのか。

支払いをすることもなく、「駐車場まで」という小倉さんの見送りを辞退しサロンを後へ。
後で家の方にまとめて請求がくるようだ。
もはや別世界。


「大輔」

エレベーターの中で統矢さんが大輔を呼んだ。
大輔は統矢さんと一瞬目が合うと、すぐにエレベーターの1階のボタンを押した。
なんだ?車は地下の駐車場だぞ?

1階に着くと、統矢さんは何も言わず私の手を引いてエレベーターを出た。
他の人はそのまま地下へ行ったようだ。

・・・え?
二人きり?
危なくないのか?いいのか?
てゆーか、何しに降りたの?

統矢さんは私と手を繋いだまま歩き出し、言った。

「もう一軒、行くぞ」



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Category : [18years]本編 | Theme : 自作連載小説 | Genre : 小説・文学 |

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