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第22話 密かな野望

11月。
寒さが増すのに比例するように大きくなる私のお腹。
もう7ヶ月だ。


「統矢さんが一緒に検診にきてくれるの初めてですねー」
「初めてですねー、って、お前が今まで平日にばっかり検診に行くからだろ。
サラリーマンのことも少しは考えろ」

さすがに、家を継いだからすぐに仕事辞めます、とはいかない。
統矢さんは今もサラリーマンヤクザを続けている。

「12月に入って少ししたら辞めるけどな。12月いっぱいは有給消化だ」
「ゆうきゅうしょうか?」
「あー、もういい。説明面倒くさい」

統矢さんは後部座席に深く座りなおし、ため息をつく。

なんだよー、冷たいな。
でもいいや。今日の私は上機嫌だ。
以前から夫婦で検診にきている人たちを見て「いいなー」と思っていた。
だから、今日は統矢さんの有給に合わせて検診に来たのだ。

そうそう、「夫婦」といえば・・・

「ユウ。籍入れるの来年でいいか?今年は親父が死んだ年だしな」
「全然いいです。あ、3月3日がいいな」
「俺の誕生日だから?」
「雛祭りだから」
「却下」
「冗談ですよ、統矢さんの誕生日だからです。統矢さんて、どうせ記念日とか覚えられないでしょ?
でも自分の誕生日と一緒だったらさすがに忘れないんじゃないかと思って」
「・・・お前、俺のことよくわかってんな」

おう。伊達に奥様やってないぜ。


病院では、受付をすると1分も待つことなく呼ばれた。
おお、統矢さんパワーか。てゆーか、ヤクザをいつまでも待合室に置いておきたくないのか。

私一人で出かけるときも、運転手とお付きと護衛が一緒・・・であるべきらしいが、
私が「絶対嫌だ」と言ったため、運転手だけが同行することになった。
徒歩の時も誰か一人は一緒だ。主に庄治が務めてくれている。

でも組長である統矢さんはそうもいかない。
少なくとも7人は常に周りにいる(会社はそうもいかないけど)。

統矢さんと二人で、映画みたり買い物したり・・・ってやってみたいな。
無理なのはわかってるけど。
それが私の今のプチストレスだ。

とにかくそういう訳で、今日は病院に、しかも産婦人科に、ヤクザさんがうろちょろうろちょろ・・・
胎教に悪いこと間違いなし。
多少割り込まれて待ち時間が増えても、誰も文句はないだろう・・・ほんと、すみません。

さすがに統矢さんもちょっと申し訳なさそうにしながら診察室へ。
診察してくれるのは、以前私が入院したとき診てくれた女医さんだ。
でも廣野組の跡取りの検診ということもあり、安藤先生も必ず立ち会う。

「はい、じゃあベッドに横になってください。ちょっと冷たいですよー」

と言って、私のお腹にジェルを塗り塗り。くすぐったい・・・
そしてマイクみたいな機械をお腹に当てる。
するとモニターにお腹の中の様子が映し出された。

私はいい加減見慣れてきたが、統矢さんは初めての光景に目をキラキラさせている。

「おお、なんだこれ!?すげーリアルなんだな・・・」
「4Dって言うんですよ。赤ちゃんの表情までわかります」

昔の白黒のザーっとした画像ではなく、立体的な映像。
少々リアル過ぎて最初は面食らってしまった。

女医さんがいつも通り計測を始める。

「えーっと、身長に太ももの長さに・・・正常ですね。あと、頭の輪切りは・・・」
「輪切り!?」
「統矢さん・・・静かにしてください」
「ふふふ、耳から耳までの直線の長さですよ。これも正常ですね」

それから、女医さんは「あら?」と言って映像をマジマジと見つめた。

「あの・・・安藤先生、ちょっといいですか?」
「はい」

そういうと、二人は私たちから少し離れ、写真をみながら何やら小声で話し合ってる。
統矢さんと私は顔を見合わせる。

せ、先生方!!それ、すごく怖いです!!やめてください!!!!
なに!?なにか問題でも!?

すると安藤先生が深刻そうな顔をして戻ってきた。

「統矢さん」
「あ、ああ」

統矢さんも私も緊張する。

「実は、お子さんなんですが・・・」

何?何?何!?

「・・・性別が分かりましたけど、お聞きになりますか?」

なんだよーーーーーー!
でも、統矢さんは相変わらず緊張したままだ。

「ユウ、どうする?」
「どうするって・・・聞きたくないんですか?」
「ユウは?」
「っぷ。統矢さんらしくないですよ、私の意見聞きたがるなんて。聞きたいけど怖いんでしょう?」
「うっ・・・怖いってゆーか・・・まあ、男でも女でもいいけど・・・うん。聞く」

安藤先生は少し笑って、写真を見ながら言った。

「女の子ですね」

・・・女の子か。
再び統矢さんと顔を見合わせる。
こればっかりは仕方ない、というように統矢さんは肩をすくめる。

「すみません」
「なんでユウが謝るんだ。どっちでもいいって言っただろ」
「そうですけど・・・」

うん。性別なんかでがっかりしてたらお腹の子に申し訳ない。
どっちでもいいじゃないか。男の子がほしければまた妊娠すればいい。
この子はこの子だ。

すると安藤先生が堪え切れなくなったように笑い出した。

「お二人ともそんなあからさまにガッカリしないでくださいよ」
「ガッカリなんて・・・」
「してますよ。赤ちゃんがかわいそうじゃありませんか」

・・・ごめんなさい。

「ははは。冗談ですよ。男の子です。ちゃんとついてます」
「「ええー!?」」

統矢さんと私は同時に叫んだ。

「僕の密かな野望だったんですよ。統矢さんに子供ができたら、こうやって驚かせてやろうってね」
「・・・おう。大成功だ」
「ははは」

男の子!廣野組の跡取りだ!!
統矢さんは私に笑いかけた。

「親父の執念だな」
「へへへ。じゃあ『蓮ちゃん』ですね」
「ああ」

二人で私のお腹に触った。




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Category : [18years]本編 | Theme : 自作連載小説 | Genre : 小説・文学 |

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