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第17話 新組長誕生

翌日はよく晴れた暑い日だった。
何故かわからないけど、この澄み切った青空が組長の告別式には似合う気がした。

出棺の時になると、さすがにあちこちですすり泣く声がした。
もう悲しくない、と思っていた私も、目を赤くしている統矢さんを見ると泣けてきた。

でも、泣いてばかりいられない。
私を含めて女中は火葬場にはついていかず、出棺後台所に向かった。

今夜は大変だ。
廣野組で今まで数回しか行われたことのない行事がある。
前組長の追悼式、兼、新組長の就任式だ。
女中の中でも過去これに参加したことがあるのはお藤さんだけ。
他のみんなは勝手が分からず、オロオロしながらとにかくお藤さんの指示に従う。

「最初は乾杯の酒だけ出しておく。乾杯が終わったら一気に料理を出すからね。
それまで料理は台所に置いといて」

というわけで、台所は物凄い量の料理が並んだ。
組長が好きだった揚げ物料理もたくさん用意した。
もうちょっと組長の身体を気遣って料理していれば、組長はもっと長生きできたのかもしれない、
という思いがよぎり、後悔した。
これからはもっと組員の好みだけでなく健康も考えた料理を作ろう。


その夜。
廣野家はいまだかつてないほどの人で溢れかえった。
お通夜と告別式の時は、全組員が来ると言っても、入れ替わり立ちかわり、だった。
でも今は、よっぽどの下っ端を除き、全組員が勢揃いしている。
医者の安藤先生のように、組員ではないけど組の為に働いてくれている人もいる。
もちろん大広間には入りきらず、庭も人で溢れた。

すごい・・・
その人の多さに改めて舌を巻く。
組長はこんなにたくさんの人を率いていたのか・・・
組長がその重圧で眠れなくなったというのも頷ける。
この人たちの人生を背負っていたのだから。
そしてこれからはその役目を統矢さんが担うのだ。

そんな大勢が見守る中、幹部の進行で式が始まった。
統矢さんが口を開く。

「まず最初に礼を言う。この二日間ありがとう」

マイクなんかない。
だから統矢さんは大きめの声で話す。
低くてよく通る声。
みんな耳を済ませてそれを聞く。

「親父も心おきなく旅立てたと思う。天国か地獄かわからないが」

クスクスという偲び笑いが漏れる。
確かに・・・まあ、組長ならどっちに行ってもやっていけるだろう。

「息子の俺からみても、親父は立派な組長だったと思う。組員からも慕われていた。
そんな親父の次が俺かよ、と自分でも思う」

もう笑いは消え、再び統矢さんの声だけが響く。

「みんなも、若くて頼りない俺を不安に思ってると思う。実際、今の俺には、親父のように
組を回すことはできない」

統矢さんは謙遜なんかしたりしない。
たぶん本気でそう思っていて、本当に不安なんだろう。

「だから、俺が一人前になるまで、みんなに手伝って欲しい。俺を支えて欲しい。
その代わり、俺は誰も見捨てない。誰かが困っている時は全力で助ける」

全員が頷く。

「親父が作ってきたこの廣野組以上の組を俺は作りたい。
そうできた時初めて、俺は組長としての自信を持てると思う。
それまで一緒に頑張って欲しい。よろしく頼む」

そう言って統矢さんが頭を下げた。
その瞬間、廣野家は拍手と歓声に包まれた。

廣野組の新組長、誕生の時だった。




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Category : [18years]本編 | Theme : 自作連載小説 | Genre : 小説・文学 |

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