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《美月》 新しい人生 6

「ヤクザならともかく、一般市民の銃殺体を警察は放っておけない」

やっと泣き止んだ私の隣に腰を下ろし、廣野君は話し始めた。

「殺人事件としてちゃんと捜査する。そうしたら当然、現場の目の前のヤクザの家を見逃さないだろう」
「うん・・・」
「勝手言って悪いんだけどさ、うちには今回の事件に関係はないけど警察に見られちゃ
まずいもんが色々あるんだ」

拳銃とか麻薬とか・・・かな。

「だから二人の遺体を発見されるわけにはいかない」
「・・・どうするの?」
「隠す。証拠も全部消す。二人は行方不明者扱いだ」
「そんな・・・」
「ひどいこと言ってるのはわかってる。でも俺にはどうすることもできない」

私だって分かってる。
廣野君自身はただの高校生だ。
廣野組のことは組長であるお父さんが仕切っている。
廣野君に文句を言っても始まらない。

でも・・・言わずにはいられない。

「ひどいよ・・・」
「・・・」
「ひどいよ!何の関係も無い私のお父さんとお母さんを殺しておいて、その事実も遺体も隠すなんて!」
「・・・じゃあ、どうしてほしい?」

そう言われても困る。
本当なら警察に飛び込んで何もかも話してしまいたい。
ヤクザの家がなくなったって、近隣住民は何も困らないだろう。
私だって、むしろその方がいいと思う。

でも、廣野君は?
廣野君はどうなるんだろう。
そう思うと、どうしたらいいかわからなくなる。

「・・・もういいよ、勝手にしてよ。私のことも放っておいて」
「これからどうするんだよ?」
「放っておいてってば!」

思わず口調がきつくなる。
もちろんこれからどうするかなんて、考えてない、考えられない。

すると廣野君が信じられないことを言い出した。

「山本。うちで働かないか?」
「何言ってるの?」
「うちで住み込みで働かないか?そうしたら住む所にも食う物にも困らない。
ちゃんと俺の責任で面倒みるから」
「自分の両親を殺した人達のために働けっていうの!?」
「もちろん今回の裏切った奴らはいなくなる。親父が許すはずない。お袋も殺してるんだ」
「そういう問題じゃなくて・・・!」
「嫌か?」

嫌だ。
いくら行くところがないからって、なんでこんな人達のために働かないといけないの?
廣野組なんてなくなってしまえばいいと思ってる私が。

そう、なくなってしまえばいい。
ヤクザなんて大嫌いだ。
ヤクザなんて未来永劫続くわけがない。
きっといつか消える。
いつか滅びる。


ふと思った。

それを見てみたい。

親の仇が消えるその時を、この眼で見てみたい。

私が復讐じみたことをしなくても、
ヤクザなんて理不尽な存在はいつか自然になくなるんだってことを確かめたい。

「・・・わかった」
「え?」
「廣野組に行く」
「いいのか?」
「廣野君がそうしろって言ったんじゃない」
「そうだけど・・・」
「言っとくけど、廣野組の為に行くんじゃない。廣野組がいつかなくなるのを見届けるために行くの」

廣野君が眼を見開いた。
でも、すぐにもとの表情に戻ったかと思うと、
見たことも無いような意地悪い顔でニヤリと笑った。

「分かった。ついて来い」

そういうと廣野君は私をホテルから連れ出し、廣野家へと向かった。
世間から疎まれ、忌嫌われるヤクザの巣窟へと。



それから私は高校を辞めた。

お父さんとお母さんの遺体とは会わなかった。
会えば決心が鈍るような気がしたから。

二人の遺体はどこかでこっそり処分されたようだ。

私の家はそれから間もなくして廣野君のお父さんに買い取られ、取り壊された。

警察もとくに怪しんだ様子はなかった。
親戚の手前、一応家出人として捜索願は出したが、
親が子供を置いていなくなるなんて、警察にとってはそう珍しいことではないようで、
「まあ、お二人とも大人ですからね。警察が関与するっていうのもどうかと」とか言って、
本気で調査に取り組む気はないようだ。

事情が事情なだけに、警察のこの対応にホッとしたが、本来ならば激怒したいところだ。

あっけない。
二人の人間の存在が、こうも簡単に消されてしまうものなのか。
それだけにヤクザという存在はやはり一般市民には恐ろしい。


「ちょっと来い」
「はい」

廣野君の部屋に呼ばれた。

私はここで女中として働くことになった。
親の仇とは言え、お金だってもらってるんだからやるからにはきちんとやりたい。
だから、雇い主である組長にはもちろん、
その息子である廣野君にも礼儀正しく接しようと決めた。

「なんですか?」
「後ろ向いて」
「・・・?はい」

振り向くと髪の毛をつかまれ、日本刀でバッサリと切られた。

「今まで16年間、『山本美月』として生きてきた過去はこの髪と一緒に捨てろ。
お前はこれからここで、『美月』として新しい人生を始めるんだ」
「・・・はい、統矢さん」


こうして私は廣野組の一員となった。
統矢さんが見守るなか、「美月」として。


― 《美月》 新しい人生 完 ―



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Category : [18years]番外編 | Theme : 自作連載小説 | Genre : 小説・文学 |

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