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第9話 喧嘩

それ以来、私の美月さんを見る目が変わった。

統矢さんが最後に呟いた言葉が忘れられなかったからだ。


―――美月は廣野組に尽くすためにここにいるんじゃない、廣野組の行く末を見るために、
ここにいるんだ―――


美月さんにとって、廣野組は親の仇なわけだ。
その廣野組でこうして働いている。
廣野組がどう滅んでいくか、それを自分の目で確かめるために。


今日もいつもの時間にいつも通り無表情にお米を研ぐ美月さんの横顔を眺めた。

美月さんなら、今このお米に簡単に毒を入れられる。

そうすれば、組長や統矢さんだけではなく組員や女中全員を殺せる。
自分自身も。




ガシャン!!!

食堂の方で何かが割れる音がした。

私と美月さんが顔を上げる。
まただ!!

私は台所を飛び出した。


ここでは30人以上のヤクザが生活している。
そんな場所で「清く正しく美しく」とは行かない。

言い争いや殴り合いなんてしょっちゅうだ。
そしてそれを治めるのは統矢さんの仕事の一つ。

私が食堂の入り口にたどりついたとき、2階から走り降りてくる統矢さんと大輔が目に入った。

そして私の後ろからは早足で美月さんがついてきていた。
ちょっとビックリした。
美月さんはこんな野蛮なことには興味なさそうだから。
その手には救急箱が抱えられていた。


中をのぞくと、40代のでっぷりと太ったマサという男と庄治が言い争っている。
二人ともいい感じにデキあがっていた。

「この野郎!!!」

マサが庄治に向かってビール瓶を振り下ろした。



よく「死ぬ直前に、思い出が走馬灯のように蘇る」というが、
人間、危機に瀕すると一瞬にして色んなことが考えられるもんだ。
(私が瀕してるわけではないが)


庄治は結婚したばっかりだ。
これから父親にもなる。
必要とされている人間だ。

一方私は、中学の頃から家出の常習犯だった。
それも、別に美月さんのようなドラマチックな理由があったわけじゃない。
単に両親とそりが合わなかっただけ。
何にもできないくせに両親にかわいがられている兄に対するコンプレックスもあった。
要するに、ただの反抗期。

高校生になったころには、親も私の家出をあまり心配しなくなった。
今、私が家に帰らないのもきっと大して心配してないだろう。

庄治と私。

どっちが大事だろう?



ビール瓶が振り下ろされるほんの1秒くらいの間に私はそんなことを考えていた。
そして、考え終わるか終わらないかのうちに、走り出していた。



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Category : [18years]本編 | Theme : 自作連載小説 | Genre : 小説・文学 |

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