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第5話 逃亡のお手伝い

一つ疑問がある。

統矢さんといい、コウちゃんといい、なんで正面玄関から出勤・登校せずに、
台所の勝手口を使っているか。

「だって駅に近いから。それにあんな派手な門から出入りしたら目立つし」

なんの為の玄関やねーん。


そういう訳で、今日も二人とも勝手口からご出発。
と、思いきや、統矢さんが部屋から出てこない。

寝坊でもしたのかと思い起こしにいくと、

「せっかくの有給なのに、睡眠の邪魔すんな!!」

と追い返されてしまった。
ほんと、ただのサラリーマンだ。


ついでにもう一つ、誰もが疑問に思うことも解決しておこう。
なんでヤクザの王子様がサラリーマンやってるのか?

これも大輔が回答してくれた。

「将来、組を継いだ時のために経済や物流を知っておけ、って組長に言われて、
統矢さんは普通にいい大学でて、普通にいい商社に勤めてる」

らしい。

「ヤクザの大事な仕事の一つに麻薬とか拳銃を海外から買って、国内の裏マーケットで
倍の値段で売ったりする、ってゆーのがあるからな。商社の仕事と似てるだろ」

似てません、全然。

「統矢さんも始めは適当に仕事して、ある程度勉強できたら会社を辞めるつもりだったらしいんだけど、
同期で随分と仕事のできる奴がいて、なんか二人で競い合って出世してるらしい」

会社で偉くなっちゃったらどうするんだろう・・・。

「うーん、このまま行くと30歳になる頃には課長クラスだってさ」

それって凄いのか。凄いよな。
裏の世界の人間のくせに表の世界で活躍するなよ。
表の世界では表の世界の人間に活躍させてやってくれ。
そうすれば日本の完全失業率は改善されるだろう。


私が台所でサンドイッチをつまみながら日本経済について悶々と考えていると、
後ろに人の気配が・・・
この人を射るような視線は―――振り向かなくても誰か分かるから無視しよう。

しかし、背後からヌッと手が伸びると、私の大事なサンドイッチをかっさらっていってしまった。
おい、王子様がそんなことしていいのか。


振り向くと、2階へ上がろうとする統矢さんに大輔が何か耳打ちしている。

少し気になった。

統矢さんはサンドイッチの皿を片手に寝ぼけ眼で大輔に何か話しているが、
大輔の方はとても真面目な顔でうなずいている。

そして統矢さんはそのまま2階へ上がって行き、大輔は1階の廊下を奥へと歩いていった。
1階の奥・・・そこには渡り廊下があって、その先はちょっとした離れになっている。
その離れは女中用の部屋やお風呂がある。

大輔は離れに向かったのか?
こっそりついていった。

すると渡り廊下の少し手前の扉の前で大輔が足を止めた。
その部屋はいつも鍵がかかっていて、中に何があるのか分からないが、
扉はどう見ても普通の扉ではない。
防音扉なのだろう。とても大きくて重々しい感じだ。


その扉の前に、5人の男達が待っていた。
一番若い二人が真っ青な顔をして俯いている。
他の3人も困ったような顔だ。
その「困った3人」の1人に、脇役Aこと庄治が含まれている。

大輔は5人に何か少し話すと自分はさっさと廊下を逆戻りしてきた。
私は慌てて手近な部屋に隠れて大輔をやり過ごすと、
5人の方へ向かって歩いていった。

「源三さん」

私が声を掛けると、例の扉のノブに手を伸ばした40歳くらいの男が顔を上げた。

「ユウか。何してる?」
「源三さん達こそ。ねえ、その部屋って何なんですか?」
「ユウは知らなくていい」
「もしかして麻薬とか拳銃とか隠してる部屋?」
「ははは、こんな分かりやすいところにそんなもん隠すか」

てことは、どこかわかりにくいところに隠してるんだな、そーゆー物を。

源三さんは幹部ではないが、組員の中では結構上層部にいるヤクザだ。
若い衆の教育係と言ったところか。

「・・・その人達は?」

視線を青くなっている二人に移す。
この二人も紛れもなくここの組員だ。

「まあ、ちょっと悪さしてな。お仕置きだ」
「じゃあそこはお仕置き部屋?」
「そんなところだ」


「この二人、組の金を勝手に使い込んだんだ。で、小指をつめて追放の刑」

庄治が私にこそっと耳打ちした・・・のだが、私は思わず大声を上げてしまった。

「何それ!?小指なんて切ったら痛いじゃん!!」

その声に罪人二人がビクっと体を震わせる。
源三さんがたしなめるように言う。

「ユウ、こいつらはやっちゃいけないことをしたんだ。普通の会社でも、金を横領したら罰せられるだろう?同じことだ」
「でも・・・それなら追放だけでいいじゃないですか!廣野組は小指つめたりしないんでしょう?」
「それは堅気の世界に戻るため組を抜ける時の話だ。今回は違う。罰だ」
「でも・・・」
「統矢さんがそうしろと言ったんだ。逆らえない」

統矢さんが?
さっき大輔に耳打ちしていたのはそれだったのか。

あんな間抜けた眠そうな顔でサンドイッチ片手にそんな恐ろしいことを
さらっと命令してたのか。

やっぱりとんでもない奴だ。


でも、真っ青な二人を見ているとそこまでしなくてもいいんじゃないか、という気になる。

「あの・・・どうせ追放するんだったら小指を切っても切らなくても統矢さんにはわかりませんよね?」
「あのなぁ、ユウ・・・」
「だったらこのまま逃がしてあげてもいいじゃないですか」
「そんなことして統矢さんにバレたら今度は俺達が罰せられる」
「じゃあ!私がこの人達を逃がします」

源三さんが眼を丸くする。

「源三さん達はちょっと向こうむいててください。その隙に私が勝手に逃がします。それだったら、もし統矢さんにバレても源三さん達のミスは不注意だけって言えるでしょう?」
「おい」
「脇役A!あんたもうすぐ父親になるんでしょう!?子供に、父ちゃんは人の指切って金もらってるんだよ、なんて言うつもり!?」
「・・・脇役Aじゃねえ。庄治だ」

庄治はふてくされたが、明らかに私の一言に動揺している様子。

「俺達に得はねーの?」

黙っていたもう1人が口を開く。
庄治と同じくらいの歳の若い組員だ。

「統矢さんに『眼を放した隙に、ユウに二人を逃がされちゃいました』てバレたら、
まあ、自分で逃がすよりは怒られねーだろうけど、ただじゃすまないだろうし」

それもそうだろう。

「それを承知で黙って見過ごしてやるんだったら、俺達にも何か得がねーとな」

「何か」と言いつつそいつの眼は私の体を這うように見ている。
そうか、そういうことか。
いつもなら、ふざけるな!と一喝してやるところだが、
ここまで大口を叩いてしまうと後にも退けない。

「いいよ、わかった。だから3人ともちょっと向こうむいてて」

源三さんはため息をつき、庄治は肩をすくめたが、3人とも私から眼を逸らしてくれてた。
源三さんが私の体目当てとはとても思えないが、やはり仲間の指を切るのは気が進まないのだろう。

私はポケットから封筒を取り出し、追放組の二人に押し付けた。
二人はきょとんとしている。

「それ。少しだけど持っていって。どうせお金ないんでしょ」

さっき貰った給料だ。
まだ先月貰った分も残ってるから全部渡してしまっても大丈夫だろう。

状況があまり飲み込めてない二人を引っ張って台所の勝手口から押し出した。

「早く行って。もうこの辺うろちょろしちゃダメよ」
「あ・・・ありがとう」

二人は瞳をウルウルさせ深々とお辞儀した。
そんな姿はまだ幼い子供のようだ。
まだこんなに若いのにヤクザになって、しかも組のお金を勝手に使っちゃうなんて・・・
何かあったのか、それともただ浅はかなだけなのか。

立派にやり直して欲しい。
私が言うのもなんだけど。


私がさっきの3人に「支払い」をすべく戻ると
そこには3人と、呆れ顔の大輔と、そして・・・
統矢さんがいた。



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Category : [18years]本編 | Theme : 自作連載小説 | Genre : 小説・文学 |

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