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第2話 採用面接

「ふーん、ユウ、ねえ」

男A改め、廣野統矢(ひろのとうや)・27歳が私をジロジロ見ながら胡散臭そうにつぶやく。

「はい!よろしくお願いします!」

私は精一杯の愛想笑いで答える。
なんたってこの統矢さんは私の雇い主の息子だ。
あまり喧嘩したい相手ではない。


ここに来た時は単なる酔っ払いだったが、今は立派な(?)居候へと昇格した。



統矢さんが出勤した後、私は自分が家出人であることを、男Bに話した。

「じゃあ、あんた帰るところ無いんだな。てゆーか、その『男B』ってやめてくんない?
一昨日はちゃんと『大輔』って呼んでくれてたのに」

そういえば、そんな名前だったか。
ちなみに25歳らしい。

「そういうあんたは確か、結子(ゆうこ)って名前だったな」
「うん」
「家出人・結子ね」

なんか安っぽいドラマのタイトルみたいだな。

「行くとこないんだったらここで働かない?」
「は?」

思ってもみない言葉に眼を丸くする。
どこの誰とも知らない家出人に「ここで働く?」って・・・何を考えてるんだ。
そもそも「ここ」ってどこ?

「ああ、百聞一見にしかず、だな。ついて来いよ」

大輔に言われるままに廊下に出る。
そのままバカ広い玄関を出て、これまたどこぞの公園ですかってくらい広い日本庭園を抜け、
立派な門をくぐった。

そこで振り返って、自分が今出てきた建物をみた。
何かの施設かと思っていたそこは、どうやらお屋敷のようだ。

「ここは?」
「廣野っていうヤクザの総本家」
「・・・」
「さっきのスーツ着てた人、金のネックレスじゃないほうな、あの人はここの組長の息子の廣野統矢さん」
「・・・」


私はヤクザのお屋敷で丸1日、大口開けて寝てたのかー!?
今更ながら自分のアホさ加減に呆れてしまった。

そういえば。

「大輔、さっき私にここで働かないかって言ったけど、どういう意味?ヤクザになれってこと?」
「結子ならなれるかもな。でもそうじゃないよ。ここで女中をやらないかってこと」
「じょちゅー?」


大輔の説明によると、こうだ。

この廣野組というヤクザは、関東では最大の組だ。
所属している組員数も100人や200人ではない。
その中でも選ばれた30人ほどがこのお屋敷で生活している。

このお屋敷は3階建てなのだが、
1階に広間や台所、2階に組長や幹部の部屋と客室(私はこの一つに寝かされてた)、
そして3階に先ほどの「選ばれた30人」の部屋がある。

幹部クラスになると、もちろん自分個人の立派な家を持っているが、
このお屋敷にも自分専用の部屋を2階に持っている。
2階に部屋を割り当てられることは廣野組の組員にとって憧れだ。

じゃあ、3階に部屋を持っているのは次期幹部候補かというと、そうではないらしい。
「選ばれた」と言っても、「優秀な」とか「将来有望な(ヤクザとして)」とか、そういう組員ではなく、
住むところがない組員や、単なるチンピラから正式に廣野組の組員になりたての人が住んでいる。
3階への入居の条件は、廣野組への忠誠心、といったところか。

つまりこのお屋敷は、偉い人と下っ端が一緒に生活をし、下っ端を立派なヤクザに育てる、
「ヤクザ養成所」なのである。

近隣の一般住民には甚だ迷惑な存在に違いない。

ちなみに、統矢さんはもちろん2階の住人。
大輔は3階だ。
もっとも大輔曰く「俺は統矢さんの付き人だから2階でもいいくらい」だそうだ。


そして、このお屋敷にはそんな上から下までのヤクザ以外に住んでいる人達がいる。
それが、掃除や料理などを担当する「女中」と呼ばれる女性たち。
彼女達は1階に部屋を持っている。
5人いたらしいが、最近1人辞めて現在は4人。

「じゃあ、私をその抜けた1人にあてようってわけ?」
「そう」
「・・・こんなどこの誰だかわからない奴を?」
「それは組長が面接してOKを出せば問題ない」

ヤクザの組長が面接、ですか。
何を聞くんだ。

でも、住み込みで働けるっていうのは家出人には願っても無い環境だ。
ヤクザのお屋敷というのは少々引っ掛かるが、贅沢は言ってられない。

「やりたい!」

私は二つ返事で承諾した。




これがヤクザの親玉か~。
私は思わず目の前の廣野組組長・廣野大吾(ひろのだいご)を繁々と見つめた。

「・・・俺の顔に何かついてるのか?」
「いえ」

60歳らしいが、とてもそうは思えない。
がっしりした体格で顔も若々しい。
スーツを着ているのだが、それがものすごく自然で、たぶん普段着なのだろう。

「名前は?」
「岩城結子です」
「歳は?」
「18歳です」
「高校生か?」
「この3月に卒業しました」

無駄なことは一切聞かない。
口調も穏やかだし、変な威圧感もない。

それなのになんなんだろう、この緊張感。
ヤクザの親玉、と思っているからなのか。
いや、これが上に立つ者のカリスマ性というやつなのか。
申し訳ないが、この人に比べるとさっきの統矢さんは「ひよっこ」どころか卵だ。

組長がじっと私の眼をみる。
視線をそらしちゃいけないような気がして私もじっと組長の眼を見る。

「・・・ここに住んでいる人間全ての食事の準備と片付け、それと公共スペースの掃除、
それが仕事だ。それ以外の時間は自由に使っていい。給料は食費と家賃を引いて月5万。できるか?」
「はい!!!」

なんて好条件!
まあ、ヤクザ相手ってことで多少の危険料も含まれてるんだろう。

「あと、ここでは個人個人の過去は一切不問。だから自分の苗字は忘れろ。お前は・・・ここでは『ユウ』と名乗れ」

過去は一切不問・・・そうか、だから大輔も私に家出の理由とか聞かなかったんだ。

「では今日から頑張れ。詳しいことは大輔や他の女中から教えてもらえ」
「はい!ありがとうございます!よろしくお願いします!」


何が認められたのかよく分からないが、私はなんとか組長面接に合格したらしい。
こうして、私は廣野組で女中として生活することになった。



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Category : [18years]本編 | Theme : 自作連載小説 | Genre : 小説・文学 |

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