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第7話 もう二度と・・・

「ユウ!組長が大変だ!」

廊下から誰かに呼ばれ、飛び起きた。
時計を見ると夜中の1時だ。

何?何があったの?

眠っている蓮を残し、統矢さんの部屋へと急いだ。
扉の前には何人もの人が集まっていたが、掻き分けてなんとか中へ入った。

そして・・・
目の前の光景に愕然とした。


数人の人に取り押さえられている大輔。
壁には・・・口元から血を流して統矢さんがもたれかかっている。
その目は激しい怒りを湛えて大輔に向けられていた。

何があったかは一目瞭然だ。
そして、その原因も・・・。

統矢さんの視線が大輔から私へ移される。

背筋がゾクッとした。

今までも統矢さんに怒られたり睨まれたりしたことは何度もあるけど、
こんな・・・
こんな、愛情の欠片もない眼差しは初めてだ。


「・・・出て行け。お前ら全員出て行け!」

統矢さんのその一言に、弾かれた様にみんなが部屋を出て行った。
大輔も、自分を押さえている人たちを振り払うと、足早に部屋を後にした。

でも部屋を出る前に大輔は私の方を振り向くと、声は出さず口の動きだけで、言った。

「ごめん」と。



―――バタン

部屋には統矢さんと私の二人だけが取り残された。

どうしよう・・・
でも、取り合えず統矢さんの傷の手当だ。

そう思い、統矢さんの机に近づいた。
統矢さんはちょっとした怪我なら自分で簡単に手当てするので、
いつも机の中に小さな救急箱を入れていた。

2段目の引き出しを開け、それを取り出そうとした。

「出て行けと言っただろう」
「・・・私もですか?」
「そうだ」

ここは、統矢さんの部屋であると同時に私の部屋でもあるはずだ。
統矢さんが強引にここに引越させたんじゃないか。

そう言いたかった。
でも言えなかった。
・・・怖かったから。

私は引き出しを閉めると黙って部屋から出た。


明け方、「大輔が出て行った」と、誰かが廊下で話している声がした。




大輔がここを出て行ってから2週間が過ぎた。
最初は、すぐに戻ってくるだろうと思っていた。
大輔が、廣野組を出て行くとは、統矢さんから離れるとは、思えなかった。

でも・・・
この2週間、誰も大輔のことを口にしなかった。
まるで何事もなかったように、いや、最初から大輔という人間が存在しなかったかのように、
毎日が流れた。
コウちゃんに訊ねると、大輔は実家にも帰っておらず、どこにいるのか分からないらしい。

亡くなった組長の言葉を思い出す。
「大輔が組を離れるようなことがあれば困るのは統矢だ」
そう。
口には出さなくても、きっと統矢さんは困っているはずだ。

私は意を決して、統矢さんの部屋に向かった。
統矢さんは珍しく部屋にいた。

「なんだ?」
「統矢さん、大輔を探してください。戻ってくるように頼んでください」
「どうしてだ?」
「大輔がいないと、統矢さんが困るんじゃないですか?」
「俺は何も困らない。困るのは、お前じゃないのか」

ジロっと睨まれる。

「一度寝た男には情が沸くのか?」
「統矢さん!何を今更そんなこと言ってるんですか?それに・・・それにそんなことしていません」
「親父に言われて大輔と寝ただろ」
「確かに私は誘いました。でも大輔は統矢さんを裏切れないと言って、拒みました。
だから、大輔と私は寝たりしてません」
「・・・」
「大輔を探してください」
「・・・ダメだ。廣野組は出るのは本人の自由だ。誰も止めたりしない。
それにあいつは組長である俺を殴った。本来なら厳罰もんだが、組を出るのを黙って許したのは
あいつの今までの働きがあったからだ」
「そんな・・・」
「あいつはもう、戻ってこない。戻らせない」

組長が「戻らせない」と言うのだから、例え大輔が「戻りたい」言っても、もう戻れないのだろう。

「用はそれだけか?だったら出て行け」
「・・・統矢さん」
「なんだ」
「私、統矢さんのことが好きです」
「・・・」
「好きです、今でも」

統矢さんは気まずそうに私から目を離した。



「蓮・・・」

部屋に戻り、蓮を抱きしめた。
ごめんね。もう無理かも。

私は今までコウちゃんがいるから頑張れた。
そして統矢さんの傍には大輔がいるから、安心できた。
統矢さんが、何か本当に間違ったことをしそうになったら、
大輔がなんとしてでも止めてくれると思えたから。

でも、その大輔はもういない。
組長である統矢さんに意見してまで、統矢さんを本当に助けようとする人はもういない。

いや、優秀な部下なら、幹部を始めたくさんいるだろう。
本当に統矢さんに忠誠を誓っている人もたくさんいるだろう。

でも、統矢さん自身が本当に心許せるのは大輔だけだった。
大輔もそれをわかっていたから、統矢さんのためなら、例え統矢さんに逆らうことになってでも、
なんでも言えた。

どうして?
大輔、どうして統矢さんと私を置いて出て行ったの?

大輔が最後に私に向かって「ごめん」と言ったのを思い出す。

――ああ、大輔は本当にもう戻ってこないんだ。
もう大輔に会うことは二度とないんだ。


そう確信した。



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Category : [18years]本編 | Theme : 自作連載小説 | Genre : 小説・文学 |

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