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第6話 二人の生活

11月の後半になり、寒さが一気に深まった。

私と蓮が生活している客間の窓から外を見る。
今夜は一段と冷えそうだ。

最近はこの寒さで外出はほとんどできなくなった。
暖かい時間に少し公園に行くくらい。

それ以外はずっとこの部屋の中だ。
こんな生活が続いているけど、蓮の健康状態は大丈夫だろうか?
一応、定期健診では順調に成長しているとのことだったけど。

こんなに広いお屋敷なのに、私と蓮の活動空間はもうこの8畳の和室だけ。
なんで何の罪もない蓮がこんなに肩身の狭い生活をしないといけないのか。

少しだけ統矢さんを恨めしく思う。

「あーうー!!」
「蓮、何?あ、もっとコウちゃんに遊んでもらいたかった?」

1時間ほどコウちゃんが遊びに来てくれていたのだが、今、帰ったのだ。

「コウちゃんはお勉強が忙しいからねー。でも、ほら、もう寝んねの時間だよ」
「ぶうーーー」

まだ言葉なんて分かるはずないのに、私の口調とか雰囲気で何を言っているか感じ取れるんだろう、
とても不満そうだ。

統矢さんと私のギクシャクした関係・・・というか、もはや何もない関係のせいで、
コウちゃんが統矢さんを見放したり勉強をやめてしまったりしたらどうしよう、と思っていたけど
今のところそんなことはないようだ。
それどころか、何故か今までより一層勉強に力を入れている。

コウちゃんが目指している大学がどれほど難しいか私にはわからないけど、
学年トップも取れるコウちゃんが「ギリギリのライン」というのだから、
かなりレベルの高い大学なんだろう。
こんなに頑張ってるんだから、なんとか合格して欲しい。

「蓮ー、そんな怒らないでよ。受験が終わったら、コウちゃんまたいっぱい遊んでくれるから」
「ばぶー」
「うーん、受験てね、確か2月の終わりだよ。あ、でも合格発表は3月か」
「うー・・・」
「もし落ちたら後期も受けるみたいだから、そうなったら3月末まで遊べないかも」
「ぶー」
「そうだね、寂しいね・・・まだまだだね」
「ううう」
「うんうん、それまで私たちも頑張ろうね」

何故か会話ができるのだ。
不思議だ。
ママパワーか。
あ、でもコウちゃんもよく蓮と会話(?)してるな。
統矢さんは絶対無理だろうな。
てゆーか、蓮は統矢さんのこと知らないしな・・・

蓮を見つめる。

大きな瞳をパチパチさせながら、一生懸命私にしがみつこうとする蓮。
ちょっと私の姿が見えなくなったら泣き出す甘えん坊の蓮。
新聞紙が大好きで、ちょっと目を離すと口に入れて「おえっ」ってなってる蓮。

統矢さん、
蓮はこんなに大きくなったんですよ。
体重ももう10キロもあるんですよ。
ハイハイだってつかまり立ちだってできるんですよ。

どうして蓮を見ようとしてくれないんですか?

蓮が無邪気に私の頬に触れてくる。
それが「泣いちゃだめだよ、僕は大丈夫だよ」とでも言っているようで、苦しくなる。
かわいくて、かわいくて、かわい過ぎて涙が出そうになる。

これから私たち、どうなるんだろう?
蓮は廣野家の跡取りになれるのかな?
私は・・・
私のことは、もうどうでもいいや。


「ユウ、いる?入っていいか?」
「・・・大輔?」

私は慌てて涙をぬぐった。

「うん、どうぞ」
「おう。元気?蓮はどう?」
「元気だよ・・・なんか久しぶりだね」
「うん、久しぶりだな・・・。蓮、抱っこしてもいい?」
「いいよ」

大輔がよいっしょ、と蓮を抱っこする。
大きな大輔が小さな蓮を抱っこする姿に私は思わず笑ってしまった。
同じ人間とは思えない。

「うわー、蓮、重くなったなー」
「でしょ?」

大輔は、統矢さんのお付きなので、コウちゃんほど頻繁にとはいかないが、
暇を見つけては蓮に会いにきてくれている。
でもここ一ヶ月ほどは会っていなかった。

「なんか、顔もしっかりしてきて、ほやほやの赤ちゃんから子供に近づいたな。
目なんて統矢さんにそっくり。こりゃ悪ガキになるぞー。将来が楽しみだ」
「・・・」

大輔は何気なく言っただけかもしれない。
でも、私は言葉が出てこなかった。
しかも堪えきれず、また涙が出てきた。

「ユウ?」
「ごめん、なんでもない」
「大丈夫か?」
「・・・」

大輔も口には出さないけど統矢さんとのことは心配しているはずだ、
そう思うと、急に堪えきれなくなった。
コウちゃんには統矢さんのことを悪く言えない。
でも、大輔なら・・・
大輔になら私が溜め込んでいることを全部吐き出してしまってもいい、かもしれない。

そうなると、もう抑えられなかった。
一気に心の中のドロドロしたものを吐き出した。

大輔は何も言わず、蓮を抱っこしたまま座って聞いてくれた。
蓮はママのこんな姿を初めて見て、驚いたような表情のまま固まっていた。

「・・・ご、ごめんね・・・」
「いや・・・」
「こんなこと言われても、大輔も困るだけだよね。ごめん、忘れて」
「・・・うん・・・」

それだけ言うと、大輔は部屋を出て行った。
私は、大輔に思いの丈をぶつけて少しすっきりした。

これで、また少し頑張れそうだ。
ごめんね、大輔。


どうして私は、「大輔なら大丈夫」と思ったんだろう?
何を根拠に大丈夫と判断したのか?
大輔とコウちゃんと何が違ったのか?
その日の夜中、私は激しく後悔することになる。



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Category : [18years]本編 | Theme : 自作連載小説 | Genre : 小説・文学 |

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