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第4話 二人の帰宅

「ユウ!おつかれさまー!!新生児室で赤ちゃん見てきたよ!もう、超!かわいい!!」

頬を赤くして大興奮の由美さん。

女中のみんなが夕飯の準備後、早速病院に来てくれたのだ。
気づけばもうすぐ夜の8時。
出産が3時くらいだったからまだ5時間しか経ってないのに、
なんだかもう丸1日くらい経った気分だ。

「赤ちゃんて、いつからこの部屋に来るん?」
「明日の午前中には来ます」
「そっかー。いよいよママライフの始まりやねー」
「はい!」

今日は出産で疲れてるからゆっくり休んでください、とのことなのだ。
でも、興奮しすぎてとてもじゃないけど眠れなさそうだ。
早く赤ちゃんを抱っこしたくてたまらない。

「ユウさん・・・身体、大丈夫?ゆっくり休んでね」
「美月さん・・・ありがとうございます」

私を含め、みんな赤ちゃんに目が行くのに、美月さんは相変わらず私の心配をしてくれる。
本当に優しい人だ。

「あれ?お藤さんは?」
「まだ新生児室のガラスに張り付いてる」
「え?あははは」

その光景を想像して思わず笑ってしまう。
でも・・・
そうだ。
お藤さんは亡くなった組長の腹違いの姉。
その組長の孫にあたる赤ちゃんは、お藤さんにとっても家族なんだ。
孫みたいなものなんだ。

でもそんなことは口に出さず、ただ赤ちゃんを見つめるお藤さん・・・
胸が熱くなった。
お屋敷に帰ったら、一番にお藤さんに赤ちゃんを抱っこしてもらおう。

「ユウさん・・・統矢さんは来たの?」
「え?ああ・・・まだです。面会時間8時までだから今日はもう来ないと思います」
「そう・・・」

ごめんね、美月さん。
なんだか申し訳なく思ってしまう。

「はい!これ!女中のみんなから出産祝い!」
「え?」

手渡された包みを開くと、そこには最新のデジカメが!

「ええ!?嘘!すごい嬉しい!!本当に嬉しい!!」
「でしょー?ユウ、どうせカメラなんて持ってないと思って、少し前に買っといたんだー」
「写真専用の小型プリンターも買ってあるで。お屋敷に置いてあるから退院したら渡すな」
「うわー・・・ありがとうございます!」
「取り合えず、赤ちゃんの写真、撮りまくっといて」
「はい!」

やった!
明日から早速いっぱい撮るぞ!!
そういえば、統矢さんの写真て一枚も持ってないな。
3人で一緒に撮ろう。

でも、その日はやっぱり、統矢さんは来なかった。



統矢さんが面会に来たのは翌日の昼過ぎだった。

病院の個室としては広すぎるくらいのこの部屋も、
統矢さんや大輔、その他の護衛の人たちが入ると随分と小さく感じる。
しかも、統矢さん始め、みんないつも結構ちゃんとした格好をしている。
それに比べ私は、パジャマ姿で髪もボサボサ。
出産という大仕事の後だから、顔もやつれてることだろう。

なんだか恥ずかしくてカーディガンを羽織り、小さくなってしまう。

「ユウ。おつかれさま。大丈夫か?」
「・・・はい」

こうやって統矢さんと面と向かって話すのは久々だ。
なんか緊張してしまう。

統矢さんは私のベッドの横に置かれた、新生児用のベッドを覗き込む。

「・・・健康そうな赤ん坊だな」
「はい。予定日より早かったけど未熟児じゃないし、何も問題ないそうです」
「そうか」

統矢さんの声にドキドキする。

「抱っこしてみますか?」
「・・・いや、やめとく。どうやっていいか分からないし、なんか壊しそうだ」

思わず笑ってしまう。
そういう風に感じる父親も多いそうだ。

「・・・じゃあ、仕事があるから帰る」
「はい。ありがとうございました」

何をお礼言ってるんだ、私は。
統矢さんは自分の妻と子供に会いにきただけだぞ。

ゾロゾロと部屋を出て行く組員を目で追う。
その最後に大輔がチラッと私を見て、ニコッと笑った。

大輔・・・。
大輔は統矢さんのお付きだ。
だから、私が統矢さんと会っていないということは、大輔とも会っていないということだ。

大輔は以前私の事を好いてくれていた。
今はもうそんなこともないだろうけど、統矢さんと私のこの状況をどう思ってるんだろう。
美月さんにだけではなく、大輔にも申し訳ない気持ちになる。

でも、できるだけ精一杯微笑み返し、手を振った。


1週間後。
私は再び庄治の運転する車で、迎えに来てくれたコウちゃんと一緒に廣野家へ帰った。

でも、今回は3人じゃない。
自分の腕の中を見る。
そう、この赤ちゃんも・・・蓮も一緒だ。

まだまだ小さいけど、この1週間で少し体重も増え、
身体も弱弱しい感じではなくなった。
オッパイを飲むにしても、泣くにしても、欠伸するにしても、全てが全力投球の蓮。
いつまでも見つめていてしまう。
日に日にかわいさが増していく。

統矢さんは出産の翌日に会いに来てくれたっきりだけど、
これからはきっと毎日蓮に会ってくれるだろう。

ちょっと緊張したけど、いつもの勝手口からではなく、正面玄関からお屋敷に入った。
廣野組の跡取りの蓮が始めて自分の家に来たのだ。
最初くらい、ちゃんと正面玄関から入れてあげたい。

そう、蓮が二十歳になる時には、廣野組の跡取りとして、
統矢さんのように背中に刺青を入れるんだ。
どんな刺青を入れるんだろう?
今はこんな小さな赤ん坊だから、刺青なんてとんでもない!と思えるけど、
きっとこれからは、その日を楽しみに待つことになるんだろう。

統矢さんは仕事でいなかったけど、みんな蓮を大歓迎してくれた。

「うわー、かわいいなあ」
「うーん、残念ながら眼つきは統矢さん譲りだな」
「ま、ヤクザの跡取りだ。あんまり優しい顔つきでもなー」
「鼻ぺちゃは、見事にユウ譲りだな」
「みんな・・・他に言うことないんですか」
「そんなちっちゃくても、オッパイ出るのか?」
「・・・・・・」

・・・まあ、概ね「大歓迎」だろう・・・。

その後、予定通り、私は客間で生活することにした。
統矢さんが蓮の泣き声とかで夜寝れないと困るので、という配慮のつもりだったが、
必要なかったかもしれない。
統矢さんは、相変わらず夜帰ってこない。

ちぇっ。
でも今はそれどころじゃない。
私もこの小さな蓮で手一杯だ。
大きな子供(統矢さんのことね)の相手までしていられない。

こうして、統矢さんと顔を合わせないまま1ヶ月が経った。



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Category : [18years]本編 | Theme : 自作連載小説 | Genre : 小説・文学 |

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